MASKED WRITER CHRONICLE

特撮や映画の感想や考察をします。仮面ライダーネタ多め。

今の仮面ライダーにはもう「牙」は無いのか?

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牙を抜かれた仮面ライダーに再び牙を与えるー。

 

東映プロデューサー・白倉伸一郎のこの想いから生まれた作品。それが「仮面ライダーアマゾンズ」である。(画像はアマゾンズではなくZO)

 

平成一期の頃より表現の規制などが厳しくなり、さらには2011年に起こった「東日本大震災」の影響により直接的な人の死亡描写も描き辛くなり、どことなく「マンネリ化」しつつあった平成2期。そんな規制描写の時代でも名作はある。ただ白倉プロデューサーや世の大きな視聴者には「何か違う」と映っていたのだろう。

 

 平成1期とは2000年に始まった「仮面ライダークウガ」から2009年の「仮面ライダーディケイド」まで10作品のことを指す。

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特に初期の作品は今でも人気が高い。

 

人間を標的とし殺害する戦闘種族を相手に、暴力を嫌う青年が変身して立ち向かう「仮面ライダークウガ」。

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クウガの続編でありながら「ライダーになった男」「ライダーになりたかった男」「ライダーになってしまった男」というそれぞれ異なった三人の仮面ライダーの戦いを描く「仮面ライダーアギト。」

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ライダーが一気に13人登場し、自らの願いを叶えるために生き残りをかけて戦いあうという異例の作品「仮面ライダー龍騎」。

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携帯型のベルトを偶然手にした青年と、人類の進化系でありその異様な姿から恐れられる怪人「オルフェク」になってしまった青年という二人を主人公にし正義の是非を問う「仮面ライダーファイズ」等々・・・・・・。

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今でも「平成仮面ライダー」がシリーズとして続いているのはこの4作品のおかげとも言われている。

 

だがそんな平成一期も作品が続いていくに従い暗さが影をひそめていき、代わりに明るい作風が増えていったのだった・・・・・・。

 

 

 

そんなこんなで2016年にネット配信という形で始まった「仮面ライダーアマゾンズ」。

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いわゆる「ニチアサ」ではできない戦闘シーンや怪人による人間の捕食描写。「アマゾンは一匹残らず殺す」という鷹山仁・仮面ライダーアマゾンアルファと「守りたいものは人でもアマゾンでも守る」と主張する水澤悠・仮面ライダーアマゾンオメガという対極な主人公。やがて両者は激しく対立する。

 

このストーリーが多くの視聴者を魅了し、好評を博した。おかげで「Season2」という続編が作られ、その「牙」は鋭さを増し、遂には劇場版が制作されるまでに発展した。それだけ多くの視聴者が平成一期が放つ「暗さ」や「過酷さ」という雰囲気に飢えていたのだろう。

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さてそんなアマゾンズから2年が経つ間、本家の「ニチアサ」枠の仮面ライダーはどうなっていったのか。

 

 

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アマゾンズ配信時の「仮面ライダーゴースト」は設定が少し難解で、またその設定を番組の中で全て明かすことができずに物語が終了したため、批判的な意見が多かった。

 

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そんな「ゴースト」の後に始まった「仮面ライダーエグゼイド」は当初、その髪やSDガンダムのような目がある奇抜なデザインと「ゲーム」と「医療」というミスマッチなテーマについて放送前から不評だった。(かくいう私も正直「終わったな」と思っていた。)

 

確かに序盤はアイテムが沢山出てきてそれを消化していきながら物語が展開するといういつも通りの「仮面ライダー」だった。

 

しかしまさかのクリスマスという子どもたちが一番心が躍る時期に事件は起きた。なんと主要キャラが敵の攻撃によって力尽き、「ゲームオーバー」の音とともに消滅したのである。しかも徐々に人気を集めていたライダーだった。

 

そのキャラを応援していた視聴者はライダーの退場に悲しみに暮れていたが、一方で平成一期の風を感じていた。(ように思う。)

 

そのライダーの退場を皮切りに物語は加速していった。新ライダーの登場はもちろんのこと、主人公の秘密、狂気的な黒幕の退場、そして全人類が巻き込まれた人類とバグスター(本作の敵怪人枠)の存亡をかけた「仮面ライダークロニクル」の開始。あるキャラと主人公の関係性、そして現れる圧倒的な力を持つボスライダーの登場、など一つのエピソードを見逃したら置いて行かれそうな展開である。

 

しかしこの連続ドラマ形式は平成2期ではエグゼイドが始めてではない。それが2013年に放送が開始された「仮面ライダー鎧武」である。


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鎧武も1クールで複数のアイテムやライダーが登場し、クリスマスに一人のライダーが脱落したり、年明けから物語から加速していったという共通点がある。

 

しかし、主人公が追い詰められてなかなか決断できずにいたり仲間の一人が敵側に回ったり、サブライダーのキャラの設定が少し弱かったり、「自然災害の脅威」に立ち向かう話で展開していたのに、その「自然災害」の植物の力で進化したオーバーロードという第三の脅威が登場し、テーマ性のぐらつきなどはあった。

 

しかし若者もテーマになっているのでなかなか決断できずにいたり敵側に回ったりというのは不安定な若者を表現するためには必要だったと思うし、オーバーロードの存在があったからこそ禁断の力を手にして人間を超えた両者の対決を魅力的に感じるのだと私は思う。

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ただ少しかゆい所に手が届かないむずがゆさはあった。


 

しかしエグゼイドは物語を加速させつつも、キャラの一人一人の設定を拾い上げ、それらを上手く物語に組み込んでいった。さらに当初の設定ではクールなキャラが、俳優の演技により段々と狂気さを増していき逆にそれが視聴者に受けて人気を博したり、退場したキャラがあまりにも人気だったので途中で復活させたりと予定外のことが起きつつも、それらを崩すことなく上手く消化していった。

 

急加速で物語を展開させつつも、緻密な物語の書き方と「ゲーム」と「医療」のミスマッチなテーマを上手くつなぎ合わせたおかげで人気を博し、放送が終了してもなお根強い人気を誇っている。

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私が考えるに、もうこの頃からライダー作品は白倉プロデューサーの言う「牙」を取り戻していたと感じる。

 

鎧武が築き上げた連続ドラマ形式と物語の過酷さという生えかかった「牙」をエグゼイドが綺麗に磨いてさらに鋭くさせていった、そういう印象だ。

 

さらにその次に始まった「仮面ライダービルド」では「牙」の鋭さを増している。

 

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「人体実験より生まれた異形の戦士」という昭和のライダー作品に共通するテーマを他の平成ライダーが避けてきたのに対し、ビルドはそれを作品全体のテーマとし物語を展開させている。

 

また物語の展開の仕方も早い。エグゼイドが10話以降から物語を急加速させていったのに対し、ビルドは1話から「フルスロットル」である。

 

主人公の秘密で1クールを展開していき、2クール目から国内での「戦争」の勃発というこれまた扱いが難しそうなテーマである。

 

またただでさえ重い展開に「早く戦争を終わらせるために」と主人公が手にしたアイテムが敵味方見境なく攻撃する「禁断のアイテム」であり、アイテムを使い暴走したせいで犠牲者が出てしまう。

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またさらに人を手にかけてしまったことで罪の意識を感じもがき苦しむ様をこれでもかと詳しく描写している。(桐生戦兎を演じる犬飼貴丈の熱演技も相まって見てる視聴者にも彼の気持ちが痛いほどに伝わってくる。)

 

・・・・・・と2クール目の途中まで書いたが今はさらに過酷さを増している。これだけでも辛辣なのにこれよりさらに過酷な展開が続いては正直心がもう息苦しい。

書いてる本人でもこんなに苦しくなる展開ではあるが、それでもすごく緻密なストーリーで面白い。観てる間は息をするのも忘れるほど熱中してしまう。

 

ただしこの過酷な展開方式はずっと続くとは限らないだろう。何度も引き合いに出している平成一期も(冒頭で述べたが)「暗いもの」から「明るいもの」へ徐々にシフトチェンジしていき、その流れで平成2期が始まったのだ。

なのでその「暗さ」もいずれはマンネリ化していきまた「明るいもの」に変わっていってしまうだろう。そうやって仮面ライダーの歴史は流れていくのだと思う。

 

しかしいずれそうなると分かっていても「エグゼイド」「ビルド」の「牙」の鋭さのおかげでライダーファンのボルテージは上がっているところだろう。これから物語やシリーズがどう動いていくか。今は全力で楽しもう。

 

 

ここで断言しよう。今の「仮面ライダー」に「牙」はある。そしてしっかりライダーファンの「ハート」に噛みついている。